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人類の叡智が詰まった箱、図書館。そこには一種独特な雰囲気がある。
それは図書館自体の古びた外観と、それに負けない軋む内装によるものだけでは無いが、それに気が付く者は、あまり居ない。
中でも取り分け古い本には、手に触れるのも躊躇してしまう様な、オーラがあるものだ。
今日は、洗いたてのシャツと膝丈のタイトスカートに身を包んだ、妙齢の女がひとり。手に数冊の本を携え歩き回っている。
近ごろ話題の歴女(歴史好きの女)である彼女は、凝り始めた日本史に因んだ本を物色していた。
受付からひとつ棚を挟み、ふたつめの中ほど。目に付いた茶色い背表紙に、妙に惹かれた。箔押しの背文字は、掠れて朧だ。
よく見ようと手を伸ばす。人差し指を伸ばし、背表紙の天に引っ掛けて、手前に倒した。
びゅう。
一陣の風が隙間から溢れた。
ことり。
風が治まると、斜めになっていた本が、元の位置へ戻った。
女は、どこへ。
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