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…日が昇る前に「キィ…」という小さな軋む音に起こされた。
薄青い光に目を凝らせば、いつもは閉まっている扉が風に揺れていた。
小さな羽を羽ばたかせ、その前に飛び降りる。
少しつついただけで、扉は大きく開き…すぐにでも外に出られるようになってしまった。
その場に佇み、部屋の隅でまだ寝ているご主人様を見つめる。
…今なら、簡単に逃げ出せる。
「まったく…何故きちんと閉めていないの? これならすぐに逃げられとしまうじゃない。逃げてもいいの? むしろ逃げてほしいの?」
ため息を吐いて部屋を見渡し、ふと餌箱が目に入った。
食べた後の屑しか残っていない。
最後に取り替えてもらったのは何時だったか思い出せない。
徐々に明るくなる外を映す鏡は開いていて、ふわりとカーテンを揺らしている。
外の空気はとても澄んでいて心地良さそうだ。
もう一度、ご主人様に目を向ける。
と、いきなり目覚まし時計の音が激しく鳴り響いた。
…それでも、ご主人様は起きそうにない。
私は鳥かごを飛び出した。
羽を精一杯伸ばして羽ばたく。
広い場所を飛ぶのは心地良い…このまま…
私はご主人様の枕元に舞い降りた。
滅多に相手をしてくれなくても
時折、餌を忘れられても
逃げ道を知ってか知らずか作られても
私はご主人様が好きだから
逃げず、早く起きてと唇を啄む…。
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