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互いに、構えは青眼。
さっきとは違い、じりじりと距離が詰まっていく。
「っ!!」
不意に、その距離が一気に詰まる。
敵の刀端がこちらの喉元に迫る。
俺は体を回転気味に横にずらし、同時に刀を弧を描くように横に振ることで突きが飛んでくるのを防いだ。
今度は弾かない。
弧を描いたまま、奴の刀を絡め取ってつばぜり合いに持ちこむ。
本当は奴に刀を落とさせることができればよかったんだが、やっぱりそうそう甘くはない。
刀はからみあったまま。
俺はその刀を、力いっぱい振りまわした。
「む……っ!」
刀と一緒に振りまわされた奴はそのまま後ろに倒れこんだ。
その顔はいつものように「このバカ力が」とでもいいたげだ。
普通ならこの局面、俺の圧倒的有利なんだろうけど、これまで幾度となく剣を交えてきた俺だから分かる。
この状況は、まだ奴のホーム内だ。
むしろ、ここからよりいっそう気を引き締めなくちゃ行けないのは俺のほうになる。
後ろに倒れた体勢からの起こり小手。
そしてそこから絶え間なく小刻みに攻め続ける高速剣術。
これは、奴の勝ちパターンの一つだった。
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