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「はっ!」
走る勢いのまま刀を突き込む。
男は、かわすでもなく自らの剣で受け流す。
普段ならこのまま反撃を食らうことに備えて刀を引き戻し、回避に回るところだが、
なんということか、この体は、この頭は、
「っつあ!」
そんなことを考える余裕すら失って、より相手に突っ込んでいった。
「っ!むっ……!?」
結果、こちらの左肩が裂け、相手の左腕がえぐられる。
「肉を斬らせて骨を断つ、か?まさか、本気でかような戦法に出てくるとは……貴様、捨て身のつもりか」
「…………」
嘲(あざけ)るように、奴が言う。
そんなこと、こっちが聴きたい。
――意識は刀に同化している。
もはや体は自由になっていない。
斬って、斬られる。
剣技も何もあったものではない、本当のただの斬りあい。
ただ、俺は。
この状況をも、良いと思ってしまっている。
少なくとも、奴を斬ることはできるのだから――。
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