_最後の日常

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「椿、もう空が暗いって言うのに何を言ってるんだ?」 「だって、さっちゃんが…」 「だって、じゃない! 女の子が暗い中歩いてみろ! 兵士に見つかったら犯られちまうぞ!」 戦争中、有り得ない話ではないし 何度かそのような噂も耳にしてはいるが… 「蝶見たら逃げちゃうでしょ?」 子供たちは蝶が苦手だと言っていた… なんか、トゲトゲしてて怖いって。 ……蝶は優しいのにな。 父親はいるようでいないものだから 蝶が頑張って大人と渡り合っている。 女の私にはそれができない… それで落ち込んでいると 蝶はいつも「ありがとう」って言ってくれる。 「椿がいるから俺は頑張れる」って。 蝶はとても、とっても優しいんだ。
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