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「ただいま~」
「おかえり、椿。
あら、蝶は一緒じゃないの?」
台所にいるのだろう母親が
蝶の声が聞こえないことに疑問をもったのか
声だけが玄関に届いた。
「蝶はぁ?」
「まだぁ!」
簡単に返事をして
蝶と椿の二人の部屋に入り
ラジオの電源を入れる。
アンテナを伸ばし、右斜め55°後ろに傾けて
本来ない局番に合わせると
ザーッとノイズ音が飛び飛びに入り
時々、人の声が聞こえてきた。
これが、私と蝶の秘密の遊び。
蝶がラジオを弄って
軍の電波をキャッチ出来るようにしたのだ。
「さぁて、どんな情報が入ってくるかな~」
いつもは隣に蝶がいて
二人でノイズ掛かった声を聞いていたのに
今日は独り…なんか、つまらないなぁ。
ペンを握りながら紙に書くがあまり進まない。
情報を聞き流すように聞いていたら
思わずペンが止まってしまった。
「今…なんて、言った?」
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