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正座する私の前には、お怒りの様子の土方さん。そんな怒りのオーラをびしびし受けて、自然と体が縮こまる。
「……遅くなってすいません!」
「……飯を食ったらすぐに部屋に来い。俺は確かに、そう言ったはずだよな」
「はい!そうおっしゃいましたー!ごめんなさい!」
「……遅くなった理由を言え」
抑揚のない平坦な声がかえって怖い。その下で怒りが圧縮されているみたいだ。
「はいっ!ええと、ですね!
まず食事の後片付けを手伝ってました!それから、永倉さん達に誘われたんで皆さんと話してたら、いつの間にかこんな時間に……
お待たせして本当に申し訳ございません!」
つい話し込んでしまったのは、土方さんの所へ行けば怒られるとわかっていたからでもある。ようするに、現実逃避だ。
「手伝いはいい。だが、俺との約束を忘れるとは、……フッ。度胸がいい奴だ」
「……ッ!度胸がいいだなんてとんでもないです!私はただ忘れっぽいだけです!反省してます!次からは気をつけます!ごめんなさい!」
こ、怖っ!目が怖い。視線が怖い。顔が怖い!私は必死に謝った。
「……ったく。ふらふらしてんじゃねえぞ。お前はただでさえ目立つんだ。正体がばれたらどうするんだ」
「……私のこと、もしかして心配してくれてるんですか?」
驚いて、思わず私は土方さんの顔をまじまじと見てしまった。
「……お前の心配じゃねえ。俺の心配だ。勘違いすんじゃねえ」
言葉では否定しているけれど、本心ではないはず。だって、少しだけ目が泳いだし、険しさもない。なにより雰囲気が和らいでいる。
「……時間を守らなくてごめんなさい。心配かけてごめんなさい」
素直な気持ちで謝ると、土方さんは居心地悪そうに腕を組み直して「……次は気をつけろ」と言った。
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