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――屋根の上の馬の鳴き声。大きな鳥の影。……紫苑と紅の二人かあぁー!
動物バージョンの時はちょっと普通じゃない姿なんだから、せめて人間バージョンで出て来てほしい。見られたら大変だってわかっているだろうに。
でも、人間バージョンでも大変なのは変わらないかな。なにせ、あの美女二人は目立つからなあ~
「見間違いなども含まれていたとしても、これだけの人間が動物に関するおかしな事に遭遇している。ちょっと面白ですね。
やはりお二人とも桔梗君が寝ていた縁側で、それらに遭遇したのですか?」
山南さんがたずねると、永倉さんと原田さんは頷いた。
「ああ。桔梗に団子を持って行った時だったな」
「俺は、グーグー寝てる桔梗の寝顔を眺めてる時だったな、たしか」
「なっ!なんて事を!永倉さん、人の寝顔を勝手に眺めないでくださいよ!」
「いいじゃねえか。減るもんじゃなし」
――何も減らないけれど、私の乙女としての恥じらいが増大するんです!
「まあまあ、桔梗君。落ち着いて。
そういえば、平助には何かおかしな事はなかったのですか?ずっと桔梗君の側にいたのでしょう」
「ずっとってわけじゃねえな。桔梗に水を飲ませようと思って、水を汲みに行ったからな。
そんで、戻って来た時に、変って言えるほどじゃねえんだけど、少しだけ珍しいもんは見たかな」
「何を見たんだ?」
「気になりますね」
記憶を辿る藤堂さんに、永倉さんと山南さんが先を急かした。
「俺が見たのは蝶だよ。きれいな蝶が、桔梗の回りをひらひらと飛んでたんだ。
桔梗は全然気づいてなかったけど。けっこう近くを飛んでたんだよな」
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