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――蝶!!
ってことは、……あの大人しい常葉までこっちに出て来てたのか!
よっぽど心配したんだ。……違うか。私が心配をかけ過ぎたんだよね。あとでちゃんと謝っておこう。
「蝶かあー。うーん、そんなに珍しいわけじゃねえな」
「はじめに言っただろう。そんなに珍しくないって」
「いえ。そうでもありませんよ。蝶が人に寄って来るなど、やはり珍しいですよ」
「そうかあー?」
「それだけではなくてですね。私が不思議に思うのは、それらが、総司と桔梗君の回りで起こっていることです。
何か、それられ理由があるのでしょうか?」
山南さんは思慮深く微かに眉を寄せた。
「さ、さあ~?わかりませんねえ」
とぼけるしかない。
「そんなもんは、全部偶然だ!
いつまでも、くっちゃぶってねえでさっさと飯を食え!飯が要らないって言うんだったら、余所に回してやるが、お前らどうする?」
突然、土方さんの苛立った声が響いた。かなりの数の皺が眉間に刻まれている。
「うるさくして悪かった。ちゃんと静かにして食べるから。許してくれ、土方さん」
永倉さんを筆頭に、騒いでみんなが口々に謝った。
「……ったく、新人が一人入ったくらいで、はしゃぎ過ぎだってえの……」
まだ言い足りないのか、土方さんはひとしきり何かをぶつぶつと口にした後、私を見た。
「……な、何か?」
好意的とはとても言えない土方さんの視線が居心地悪い。
「……話がある。飯を食い終わったら、すぐに俺の部屋に来い。いいな、桔梗」
「……は、…い。」
有無を言わせぬ圧力を受けて、私は大きく頷いた。
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