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「どういうことですかっ!!」
社長室の扉をノックもせずに開け、容姿の整った男がずかずかと入ってくる。
黒い髪に黒い瞳。綺麗な眉はつりあげられていた。
その手には何故か、女性物の着物を持っている。
「…何よ、うるさいわね」
扉の正面に置かれた長い机の前に座った女は男を一別すると爪磨きに戻る。
その様子を見た男は絶句していたが、気をとりなおして机へと近づきそこに持っていた着物を乱暴に置いた。
「ちゃんと説明してください」
「それを見てわからないほどあなたは馬鹿だったかしら」
ちらりと女が男を見る。
「わかりたくもないです」
「これは社長命令よ」
「こんな命令がありますか!!」
ふざけるなと、言いそうになるのをなんとか堪える。こんな女でも社長は社長だ。
「とにかく、僕には無理ですから」
「やってみる前から諦めてたら何も出来ないわよ?」
「こんな着物来てお見合いに行かないといけないくらいなら何も出来なくて結構です!!」
想像しただけで頭が痛くなる。
「なんで僕が姉の代わりなんか…!!」
「大事な商談相手なのよ。優秀なあなたならわかるでしょう?」
組んだ指の上に顎をのせ、社長がにっこりと微笑んだ。
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