秘密の関係

失踪

「我社の誠意はお客様の求める物を提供すること。つまり、そういうことだから」
「だから、なんですか」
「早くそれ、着てきなさいって言ってるの」
それ、と言ったのは先ほど僕が持ってきた着物のことだ。
「さっぱり意味がわかりません。わかりたくありません」
耳を塞いで後ろを向く。
もう嫌だ。
「お姉さんが帰ってくるまでで良いって言ってるのよ。どうせあんな男すぐに飽きて帰ってくるんだから」
「でしたら先方に連絡してお見合いの日程をずらしてもらうとか…」
「当日のドタキャンなんて駄目よ。失礼じゃない」
「だったらもっと早くに僕のところに話しにくるとか!!当日にいきなり姉のふりしてお見合いに行けなんて言われたって戸惑うに決まってるじゃないですか!!」
今朝出社してくると、秘書の鴨井さんに今日は別の業務をしてもらいますと言われ何故か更衣室に連れて行かれ、そしてこれに着替えろと言われたのだ。ありえない。
「あら、お姉さんの失踪は３日ほど前だったわよね。あなただってわかってたんじゃないかしら？」