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耳元で鋭く風が唸り、コートが煽られ激しくルウの腿を打つ。
一瞬、豊かな土の香りが鼻を掠め、ルウは己の体が地面が近いのを悟った。
(あれ、そういえばお婆様の本、あそこに置きっぱなしだった気が……)
はっと重大なことを思い出して、真っ赤な目を見開き手で宙を掻いたのも後の祭り。
「うぐっ……!?」
ルウは後頭部をしこたま硬い地面に打ちつけ、思い出したことも思考から吹き飛んだ。
チカチカと目の前に閃光が散り、痛みがやがて全身に行き渡る。
――何故か、カチコチと忙しなく刻む秒針の音が近くで反響するように聞こえた。
しかし、ルウはその音の正体に気づく前に、朦朧とした意識は時計の音の中へ消えてしまった。
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