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――…
脳裏を真っ赤なトランプが過ぎっていく。
どれもこれもが、真っ赤な手役。
……トランプってこんなに真っ赤なカードばかりだったかな。
おかしいな、と思い考えたのもつかの間、ルウは漸くそのトランプの赤が自分の血だということに気がついた。
そうか、だからこんなに真っ赤なのか。
悠長にカードを眺めていると、ふと痛む頭を誰かに触れられた。
痛いよ、と振り返ればそこには見知らぬ女性がルウを見下ろしている。
――誰だろう?
「大丈夫よ、このくらいなら。いい?ルウ。怪我は痛いと思うから痛いの。だから、痛いと思わなければ、ちっとも痛くなんてないのよ」
「……え?」
よしよしと尚も痛む頭を撫で続ける女性の瞳は、自分と同じような真っ赤な色をしていた。
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