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「ご機嫌よう、異界の住人。悪い夢でも見たのかい?」
「ぇ……?」
ぱちぱちと目を瞬いてみるが、目の前に映るのは赤。
抱き寄せた銀髪は、あの聖母のような女性ではなく目の前で饒舌に微笑む奇妙な男だった。
「君、は……?」
「帽子屋!!」
思いもよらない事態に目を見開いたまま、ルウが口を開きかけた瞬間、大げさな音を立てて後方の扉が大きく開かれた。
何事かと開きかけた口を閉ざして目を瞬かせれば、男は至極面倒くさそうに顔をしかめ、深々とため息を吐く。
「……どうした、三月」
ふわりと揺れるリコリス色の髪が、ルウの頬をくすぐる。
しかし、やがて間を置いて裏返ったような奇声がモダンな室内に大きく響き渡った。
「な、ななな何やってるんだよ二人して……っ!!」
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