迎えに行ってやってくれ

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「……?」 ふと、ページを読み返していたルウの指先が唐突に止まり、まだ復元していない物語の架橋を目で追っていたその顔が、僅かにこわばった。 思わず本を取り落としそうになりながらも、目はページを凝視することをやめようとはしない。 「なんだ、これ……」 呻くような声がルウの口から僅かに漏れた。 その真紅の瞳が向かう先には、まるでインク壷をひっくり返したような漆黒の闇を塗りつけられた奇妙なページ。 その上インクの海は紙面に染み込み、それ以降のページの文字・挿絵全てを侵食してしまっているのだ。 「…………」 ルウが過去にこの本を見せてもらった時、これはこんなにも酷い状態ではなかった。 確かになかった。 もっと綺麗で、もっと大切に扱われていたはずだったのだ。 知らず知らずのうちにルウの顔は険しくなっていく。 どれだけこの本を祖母が大切にしていたかを思い出せば出すほど、ルウの中でじわりと心が締め付けられた。 唇を噛みしめ、込み上げる悲哀を内側に縛り付け、何とか気を取り直してルウはインクの海と化しているページにゆっくりと指を乗せた。 指先が忌々しいインクを吸い出して、再び祖母の愛した本に姿を変えるために。祈るような心境でルウは深く息を吐き出した。 ――刹那。
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