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「重い、退け」
あらぬ方向へ向かい始めた俺の思考を呼び戻すかのように、俺の下から響く不機嫌な声
「あ、わりぃ」
別に拒否する理由もなく俺は素直に亀から離れた
すると、亀はすぐ俺から距離をとってくるりと背を向けた
っか、そんなに嫌だったのかよ
昔はこんなの普通だったのに
じゃれ合って、一緒にゴロゴロして
なのに、時間が経つにつれてこんなにもよそよそしくなって
なんか、寂しいわー
…ん?
「亀梨?」
「な、なんだよ変態」
おい、変態は余計だっつーの
それよりも
亀の耳が赤くなってるのは俺の気のせい?
それに心なしか焦ってるみたいだし?
まさか…
「お前、もしかして照れてる?」
「は?何言ってんの?」
そう言って振り返った亀は何事もなかったような表情
やっぱり俺の見間違いだったのか?
「それより、お前これから仕事入ってんじゃねーの?」
「あ゙、そうだった!」
亀に言われて見た時計は予定時間の1時間前を指していた
「やっべ!遅刻するー!!」
バタバタと部屋の中を走り回って準備する俺と
それを見てため息をつく亀
この光景が当たり前となりつつあった
「じゃ、行ってくる」
「ん、行ってらっしゃい」
いつも玄関まで見送ってくれる亀
まるで新婚のよう
そんな亀に見送られて俺は部屋を出た
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