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「じゃあ本格的に紅茶が好きになったのっていつ?」
改めて二に問われ、俺の紅茶好きの始まりを思い出す。
「……確か中学二年の冬ぐらいに、ケーキ好きな母さんと姉と一緒に良い感じの喫茶店に行って、そこは飲み物はコーヒーと紅茶しかなくて、コーヒーが苦手な俺は紅茶を頼んだんだよ、たしかダージリンティーだったと思う、それが香りも味もペットボトルの紅茶と全然違うわけで、それから紅茶にハマった」
たしかキッカケはこれだ。
「……それだけ?」
「ああ、それだけだ」
「ふぅん……」
二は冷めかけの紅茶を一気にあおると、ため息を吐き出した
「つまんないわね~」
「たしかにつまんない話だったが、その反応は失礼すぎないか?」
あのあと俺が紅茶にはまりだしたら、コーヒー好きの母さんと姉とで、よくコーヒーと紅茶どちらが優れているかで論争をするようになったが、それはまた別の話だ。
「私はもっとドラマチックなキッカケを期待してたのよ。まあ、でも私が掴めなかったくらい下らない情報だから当然かぁ」
「……参考までに聞くが、ドラマチックなキッカケってなんだ?」
「明日倉、紅茶おかわり」
「……はいはい」
スルーにも慣れてきた自分が悲しかった。
会長のスイッチの入った大声が聞こえ始めた生徒会給湯室のひとときは、こうして過ぎてゆく。
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