170円と購買部

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時間に余裕があるので食後の紅茶を淹れる。 「だが私は言っちゃあなんだが、愛する息子には過保護になりがち、それは母としてしょうがない事だ」 「へー」 適当に相槌を打ちながら紅茶を蒸らす。こうすることでさらに紅茶の深みが増すのだ。 「だが愛する息子のために私はあえて息子を突き放そうと思う、これは苦渋の決断、断腸の思いで胸が張り裂けそうだ!」 まるでミュージカルのような母さんのオーバーリアクション。 「と、言うことで今日は弁当ない、お金上げるからお昼は自分で買ってね」 「結局言いたかったのはそれ?」 「さっきも言ったが、私だって好きでやったわけじゃない、愛する息子のために弁当を作ることができないなんて、こんなに辛いことはない」 「単に母さんが寝坊して弁当を作る時間がなかっただけじゃない?」 「ナナナニヲイッテオルヤラ」 早口で否定する母さん。口調が変だったり、俺の事を『愛する息子』と言ってる時は120%嘘をついてる時だ。 「俺は弁当作って貰ってる立場だから別に咎めはしないし、そもそもそんな事できないよ」 「まあ! 我が子がいつの間にこんなに成長して! 母さん嬉しい!」
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