170円と購買部

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結局コントじみたやり取りをしているうちに登校する時間を過ぎてしまい、俺は慌てて家を出た。 「それで今になってほとんど金がないのに気づいたのか!」 昼休みの空腹時、山田の大爆笑がウザい。 昼休みになるとどのクラスも創立者祭の出し物の準備に慌ただしくなるが、出し物が休憩室のこのクラスは準備なんか存在しない、いつもの昼休み風景。それは置いといて。 「母さんにうまくはぐらかされた……」 うなだれるしかない、手元には170円、俺の財布から不足分を補おうとするも、お小遣い前の財布の中は現在氷河期をむかえている。 「170円じゃ満足に食べられやしねぇ」 「それなら購買部で買ったらどう?」 突如二が現れ、俺たちの会話に割って入ってきた。 山田は二を視認した瞬間に席を立ち、『用事が出来た!』と言い残し食べかけの弁当を待って教室から出て行った。 「購買部? それって瑞美がやってる購買部か?」 山田が残りの弁当をどこで食うか気になったが、二を無視するわけにはいかないので二の話に乗る。 そういえば俺は購買部には文房具を買うくらいで、惣菜のコーナーに行ったことがないな。 「そう、確か今パンの割引やってて安いはずよ」 「ふぅん……それじゃあ行ってみるかー」 「いってらっしゃーい」 どっちにしろ昼飯は買わなきゃいけないし、そう思って席を立ち教室から出る。
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