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それから俺と瑞美は喫茶店の事を少し話し合って別れた。
昼休みも終わりに近づいてきたので、パンを食うべく教室に急いだ。
その途中、男子トイレから出てくる山田と合った。
笑顔で元気な山田、その手には空になった弁当が握られていた。
様々な感情が押し寄せいたたまれなくなり『飯食わなきゃいけないから』と言ってその場を去った。
「そうか、俺は授業始まるまでウロウロしてるぜ!」
背中から聞こえる山田の声が痛かった。二恐怖症が早く治るよう心から祈った。
教室に戻ってみると、二は山田の席(つまり俺の席の前)に座り、深紅の携帯を操作していた。
「安かったでしょ?」
席に座ると、二が携帯を閉じ、こちらを向いた。
「ああ、かなり安かった。ありがとな」
二の情報のおかげでたくさんパンが買えたので素直に礼を言う。
「……ところで明日倉」
「なんだ?」
俺は返事をしつつ、アンパンの包装をはがし、口に入れようとする。
「さっき明日倉が購買部の『料理研究会の女子たちの手作り料理フェア(今ならもれなく作った女子の顔写真付き!)』ってコーナーの前で悔しそうにしてたってタレコミメールがきたんだけど……」
俺の動きが止まった。二が深紅の携帯をちらつかせながらニンマリと笑う。
俺は無駄だと知りつつも二に言う言い訳を考えながら、食べようとしていたアンパンを置いた。
昼飯は五時間目の後になりそうだ。
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