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少女は密林の中を駆けていた。
荒い呼吸を繰り返すたびに、ショートカットの黒髪が揺れる。
溢れる汗は滝のように流れていて、少女の感じている危機感をそのままに表していた。
「なんで私が、こんなことに」
半死半生の弱気な言葉が、少女の口をついて出る。
少女の十数メートル後ろには、黒ずくめの格好をした鋭い目の男。
その視線は、しっかりと少女の後ろ姿を捉えていた。
「もう、ヤダッ」
少女がそう甲高い声で呟いたところで、この絶対的な絶望の状況が好転するはずがない。
濃く生い茂った木々は地上を波打つように生え、少女の逃亡を阻害した。
「キャッ」
はいていたスカートの端が、枝に引っかかってしまった。
耳の先まで真っ赤にして、少女は慌てて生地を引っ張る。
スカートは、無残にもビリビリと破れていった。
「やああん、見えちゃうぅっ!」
絹を裂くような悲鳴をあげて、少女は慌ててスカートを押さえしゃがみ込んだ。
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