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「リセットしょう。東京に行きゃ何とかなるさ。東京に行きゃ…」
当てがあるわけではなかった。もちろん知り合いなどいない。それでも東京というだけで充分魅力的だった。…東京にさえ行けば、何かに出会えるかもしれない…幸一は思った。
「東京、東京。」
4時間ほど電車に揺られて、幸一は東京の地に降り立った。小学校の修学旅行以来である。
「やっぱでけぇや。とりあえず2,3日はネットカフェにでも寝泊りするとして…」
今更ながら、幸一は先のことを何も考えていない自分に気づいた。実際、2,3日もネットカフェで寝泊りすれば、所持金は底をついてしまう。まさかホームレスになるためにわざわざ上京してきたわけではない。
「どこか住み込みで働けるところはないかな。」
幸一は近くのコンビニを探し、就職情報誌を買い求めた。それでも今日1日ぐらいはハネをのばそうと思った。
「原宿でも見物するか…」
特に何か買い物をするでもなく、ただブラブラと原宿界隈を散策していたが、さすがに日も暮れ始めてきた。お腹も空いてきたので、牛丼並盛を注文し、夕食を済ませた。
「そろそろどこかに泊まるか…」
ちょうど駅前にネットカフェがあったので、幸一は一晩そこで過ごすことにした。
「何かいい仕事はないかな…」
買っておいた就職情報誌を取り出し、(住み込み)のところをパラパラとめくってみた。
『新聞配達 正社員募集 配達・集金・簡単な営業 歩合制 朝・夕賄い付き 月収20~40万 アットホームな雰囲気の仕事場です』
「これ、いいんじゃないかな。明日、朝にでも電話してみよう…」
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