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男が増えたことに、咲の動揺も増す。
新たに入ってきた男は二人とも着流しだった。
「言葉はわかるようですよ。」
先程の綺麗な顔の男が楽しそうに笑った。
その言葉に頷くと、新に来た二人のうち、目付きの鋭い方の男が、凄むような声が咲の耳に届いた。
「お前、何者だ?」
言い方にカチンときた。
偉そうに、上から目線で話す男。
一緒に入ってきた男は、厳しい表情をしていたが、静かに咲を見つめている。
(誘拐?しといて、何者って…)
少しだけ頭が動きだし、咲は男を睨んだ。
「春名咲です」
寝起き(多分アルコールも残ってている)と混乱で、口がカラカラに渇いていたが、強気に答えた。
「名を尋ねてるわけじゃねぇ。
何故壬生寺でいた?
何をしていた?」
そんな様子を気にする訳でもなく、男は更に鋭い声をあげ、咲に近づいた。
「みぶでら??
…ここは一体どこなんですか?
私、家で寝てたはずなんですけど。」
たしかに昨日は相当呑んだが、記憶を無くすほどじゃない。
葵たちと別れ、ちゃんとタクシーにも乗ったしコンビニでお茶も買った。
マンションで細工が細かいパンプスを脱ぐのに手間取った記憶さえある。
働きだしたばかりの頭を何度振っても、咲は何も分からなかった。
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