幼少時代

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幼い頃、私の父親はとても厳しく、怖くて、触れる事もドキドキする、父親なのにとても近くて遠い存在でした。笑顔をあまり見たことのない表情の裏には、どんな気持ちや、どんな顔があるのかも知らず、ただただ怖く、父親が仕事から帰る時のあの軽トラックの独特な音が嫌で嫌で仕方ありませんでした。まずは食事は全員揃ってなくては食べれない。どれだけ父親の帰りが遅かろうと、私達がどれだけお腹をすかせていても、全員揃わない事には食べれません。宿題は必ず確認され、してなかったり間違っていたりすると、叩かれたり、外にある暗い物置に入れられたりしました。私はただ怖いという感情しか父親になく、愛情があると言えば嘘になっていたと思います。……そんな父親の大きな背中を触れもせず、少し離れた所から見ながら、ついて歩くのが私は好きでした。今でもあの広い、そして少し寂しげな背中を忘れる事はありません。幼すぎたあの頃は、父親の愛情すら全くもらってないと自分で被害妄想になり、妙な態度を何度もとったと思います。不器用な父親はそんな私の態度をどう受け止めていたのでしょう… 今考えると涙が出てきます。 涙… 父親が初めて泣いたのを見たのは丁度この頃。飼っていた犬が他界した時、一晩中、犬の側で寝ずに泣いていました。私の声も聞こえない、届かない。だから私も又少し離れた場所から、寝ずに父親のそんな姿をいつまでも眺めていました。 今、あの頃に戻れるのなら、父親の側で一緒に夜を明かしただろう。タイムマシーンがあるのなら、私はあの頃の自分に教えてあげたい。父親の不器用な愛情を…
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