第一話

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たった三年間の仮初の自由…… それでも、ティアはこの仮初の自由に心から満足していた。 幼い頃に交わした約束、相手の顔すら朧気にしか覚えていない。 でも、ただひたすらにその約束を信じていた。 ――“せかい一の騎士になって、ぜったいにきみをまもる、じゆーにする” “じゃあ私はせかいで二ばん目の騎士になって、まってるわ” その約束を果たす為、毎日毎日剣の訓練を積み重ねた。 もう一度彼と会う為に、あの美しい瞳の彼に…… そう言えば、今日私を助けてくれたハサウェイ君は、どことなく彼に似ていましたね。 でも、彼な訳ないですね、私が彼に渡したペンダントもしていませんでしたし。 それでも、ティアはハサウェイが彼なら良いのに…… と、心の中で呟いた。 ティアは、アストラス大通りを南に真直ぐ歩き、ある店の前で立ち止まった。 ――『戦士の空騒ぎ亭』 父の知り合いであるハマルという人物の営む宿屋兼酒場だ。 ここに住むことが、父が三年間の自由を許した三つの条件の一つだ。
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