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不思議に思い、力を入れて閉じていた双眸をゆっくりと開けていく。
徐々に、周りの景色が見えてくる。
しかし、何故だろう?
前方の景色だけが、目に入ってこない。
周辺にいた何人かの人たちが、何やら騒いでいるが、ハサウェイの耳には、何も入ってこなかった。
――――兄だ。
ハサウェイの前には、兄が立っていた。
燃えるような、鮮やかな真紅の長髪を風になびかせて……
髪と同じ、真紅の鮮血を胸から垂らして……
(お兄……ちゃ……ん??)
兄は、自らに突き刺さったレイピアの剣の柄元を握り、レイピアを体から引き抜いた。
「……お、おに…い…い…ち…ゃ…」
兄の体から吹き出す真紅の鮮血に、もはや言葉にならない声で、ハサウェイは兄を呼ぶ。
兄は、その声がまだ聞こえるのか、それとも聞こえないのか、ハサウェイの声には反応せず、引き抜いたレイピアで中年の男の喉を穿った。
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