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唇を噛み切るほど強く噛み締め、雲を突き破るくらいの、あらん限りの力を振り絞って、幼いハサウェイは天に向かって慟哭した。
「にいさぁーーーーーーん!!」
辺りを見回すと、先程まであった兄の亡骸はなく、周りの野次馬もいない。
代わりに、起床の時間を告げる目覚し時計のアラームが空しく鳴り響いている。
「夢…………か」
溜め息を漏らすような小さな声で、呟くハサウェイの頬には、朝日を受けて銀色に輝く滴が伝っていた。
ふぅ…………
久しぶりに見たな。僕の、決して消えることない罪の記憶……
僕の笑顔が消えた日の夢を……
9年前の、あの惨劇の日のことを……
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