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普段はチャラチャラとしているのに、たまに総てを見透かすような鋭い目をする。
「ありがとうございます」
「ううん。松永くんもお大事にね!」
松永、亮(りょう)くん。
多分…大丈夫だよね。
ニッコリと笑う松永くんからは、何かに気付いたようなそぶりは見受けられない。
ホッとして、胸を撫で下ろす。
…もっと、こっそり見よう。
そう心に決めて、救急箱を元の位置に戻そうと松永くんに背中を向ける。
「…裕樹は難しいっスよ…」
「!」
ギクリとして振り向くと、そこにはもう松永くんの姿は無くて。
コートの中に戻っていた。
―聞き間違い、じゃないよね―
まだドキドキと怪しく律動する心臓を押さえる。
気付かれた――
その事が頭の中を駆け巡っていた。
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