118人が本棚に入れています
本棚に追加
そして次にスポンジヤスリで、綺麗にする作業に入る、まず表面と内面を滑らかにし、また指輪の側面を整えて両面が平行になるように削る。
シャリシャリ…
霧島さんは、今までの作業工程の中で最も指輪に力を加える作業に、緊張しっぱなしである。
俺も余計な口は挟まない、もし声をかけて割れたりしたら、さすがの霧島さんも怒るだろうし…
そうして数十分をかけて滑らかにした指輪に、更に神名やシンボルを刻む恐るべき作業がある。
『あの…これ…スッゴく怖いんですけど!?』
霧島さんは指先を少し震わせながら、先が尖った細い金属棒の先に水を付けて、指輪を部分的に柔らかくしながら、カリカリと文字を削ってゆく…魔術用の指輪として無難に「PPP.VLIDOX FATO」…と刻む。
これは、パラケルススの三叉の矛に刻まれるものだ。
これで、護符代わりの指輪として身に付けておくだけでなく、魔術を使う際の意識の集中点に使える、ただ、指輪である以上は、魔術剣のように切っ先へ霊力を一点集中するのは、難しいだろうけど。
『ふぅぅぅぅ…お…終わった…』
盛大に息を吐きながら、霧島さんは無事に文字を刻み終えたのを告げる、此処まで来たら、殆ど完成だ。
最初のコメントを投稿しよう!