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『霧島さん、構えて』
俺にそう言われて、霧島さんは息を整えると、再び「構え」た、そして俺も同じ構えを取る。
構えはオーソドックスなもので、左手を前、右手を顎の横の位置に、体は半身で左足を前に出し、右足は後ろに下げてかかとを少し浮かせる…足幅は一歩踏み出したか、それより少し小さいくらい。
『じゃあ霧島さん、俺が移動したら、それについて来てジャブを打つんだ、いいね?』
『あ、は…はい!』
霧島さんがそう答えたので、俺はステップで真後ろに下がる。
ザッ!
霧島さんも直ぐに真正面から踏み込んできて、ジャブを放ってくる。
俺はそれを前に出した左手で、やや強く払い除ける、このようにジャブ、ストレートなど真正面から突き出すパンチは、左手を左右に振るだけで、簡単に捌けるのだ。
『いいね、その調子だ!』
俺は真後ろに下がったりするばかりじゃない、時たま横にも移動する。
『…っ!』
その動きに、やや遅れてついて来くる霧島さん、確かに正面の相手が近距離で素早く、真横に移動すると、戸惑うよなぁ…。
それでも必死について来てジャブを打つ霧島さん、こうやって動きながら相手にジャブを打つ練習だけでも、後々に動き方を知らない人との違いが出てくるもんだ。
そうして霧島さんと俺は一時間程度だが、日が沈むまで練習をして帰宅した、もう冬が近いので夕方の五時には暗くなるし、寒くなるので汗をかくような練習を、長々と外では出来ないのだ。
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