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「上之宮玲菜さん、僕と付き合ってくださいっ!!」
ざわめく周囲の声が、一瞬止まった。
しかしそれはより一層の騒がしさをもって僕の頭上を飛び交っていく。
「誰アイツ?」
「フロイラインに告白するなんて身の程知らず……」
「土下座って、引くわー」
僕はつるつるとした床に正座し、手をついて頭をすりつけていた。
土下座。
日本で一番低姿勢で、一番なりふり構わないお願いや謝罪の形だ。
いま僕は、上級生の教室という足を踏み入れるだけでもためらう空間で土下座していた。
頭のちょっと先で、上履きがかすかに動くのを感じる。
緑色のゴムは、三年生の証。
そして、黒い靴下に覆われた形の良い脚の持ち主は、みんなに「フロイライン」と呼ばれる少女、上之宮玲菜その人だった。
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