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信じ難い一言だった。余程機嫌がいいのだろうか。
彼女が自ら「彼」に話し掛けることはあっても、僕に進んで謝礼を述べるなど、今までは考えられなかった。
「……どういたしまして」
声を掛け、名残惜しさを振り切って室を出る。
このままでは機関の急務も一時忘れて、この場に居ついてしまいそうだった。
貴重な、幸運の一日が最悪の一日になるなんてよくある話だというのに、僕はそれを完全に失念していたのだ。
校舎外に待機していた車に乗り込んで、僕は本部へ向かった。
そこで知らされることになる「未来」を、何一つ知らぬまま。
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