始まり

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驚かないで聞いてほしい。 俺の学校には名探偵がいる。勝ち気で、バカで、それでいていち早く真相を掴んだという、まるでスーパーマン、いや、スーパーウーマンのような奴だ。 そいつは俺の後輩で、高校二年生。名前は神崎奈々といって、少し前映画にもなった『NANA』と同じ名前だ(本人は少し嫌がっているようだが) それにしても、あの事件は凄かった。 人が、たくさん死んだ。 そしてそのすごい事件を解決へと導いたあいつは、やはりすごい奴なのだろう。 俺は奈々に初めて会ったあの日を思い出す… 9月15日、季節の変わり目真っ只中のこの日、俺は授業をサボって屋上への階段を登っていた。 数学の時間だった。 間違えても将来役に立たないであろう教科を教わって、何が楽しいのだろうか。俺には全く理解できない。 そんな都合のいいサボリの理由を考えながら、屋上のドアを開ける。 風が、頬を打った。 ばらける髪を押さえながら、俺は屋上に出る。 太陽は思わず手で日除けを作ってしまう程に眩しかった。 俺は歩を進める。 目指す場所は屋上の一番上。つまりこの学校の頂上ということになる。 貯水タンクに付いている鉄のはしごに手をかけ、下を見ないよう一気に上がった。…落ちたら死ぬな。 イヤな想像を振り切って、俺は頂上にたどり着く。と !? 先客がいた。
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