始まり

3/5
前へ
/52ページ
次へ
そいつは頭を向こう側に向けて眠っていた。 女子だ。 断っておくと、うちの学校はごく普通の公立高校である。 男子はズボン、女子はスカートの着用を義務付けられている。 つまり、この位置からだと ―――丸見えなんですけど…。 俺はできるだけ見ないように顔を反らしながら、そいつを起こしに行った。 そいつが二年生であることは上履きでわかった。 この学校は一年生が青、二年生が黄色、我々三年生が赤色の上履きと決まっているのだ。 顔が見える位置まで来た。 …寝顔は結構可愛い。でも見かけない顔だった。 転入生か何かか? 俺はそう思いながら、そいつの肩を揺すった。 「お~い、起きろ~」 「……ふにゃ…?……あんた、誰?」 そいつは体を起こして、寝ぼけ眼でこちらを見てくる。 半身を起こしているので、髪が風で乱れて、大変なことになっていた。 「もしかして、痴漢!?キャー!いくら私がかわいいからってそんな…」 「少し落ち着け、バカ」 俺は軽くげんこつを入れた
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加