煙のように

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     「飯作ってるから風呂  にでも入ってこいよ」 今何を聞いてもコイツはきっと答えない 自分の中で溢れ出して、やっと打ち明けてくれる 俺はそれ迄待つしかないのか?     ……和也 差し出した俺の手を見つめ  「仁…少しだけ俺を  抱きしめてくんない?」 震える声で告げてくるから 俺は何も言わず、横に座り「さぁ、どうぞ」っと両手を広げる 嬉しそうに笑い俺の腕の中に収まる和 ギュウっと抱きしめる これで少しはお前を癒せられる? 少しは役に立ってる? 数分だったかも知れない 数十分だったのかも知れない ただ和が満足するまで抱きしめた  「仁 ありがとう」 いつもの和の笑顔  「どう致しまして」 風呂に入ってくると出ていく和を見送り、俺はベランダに 煙草を吹かし、吐き出した煙を目で追う アイツの心の中にある何かもこの煙のように消えてくれるのだろうか それとも人の身体に良くないとされる、この煙のように2人に害を及ぼすのだろうか     和也… 俺はいつも不安なんだよ お前が俺の前から消えそうで… .
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