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― 痛い ―
手の痛さに目が覚めた
きつく握り締めていた手
指を一本一本広げて見れば残る爪痕
夢の中で
肩を…腕を…服を…
掴もうとしてはするりとかわされそのまま強く握り締めた手
「愛してる」と何度呟いても
届かない アイツには届かない
行ってしまう 俺の届かない所に
もう何日同じ夢を見て同じように手の痛さに目が覚めただろうか…
始まりはラジオ局に届いた一枚のハガキ
スタッフが見せてくれたハガキの山に、たまたま手にしたそのハガキには
…たった一行
「ジンを返して」
気が遠くなる
吐き気がする
震え出す身体
誰に…返すの?
スタッフに気付かれる前にそのハガキを鞄にしまう
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