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時は今よりさかのぼること数百年。
とある小さな村に村一番大きな稲荷神社があった。
そこには大層立派な銀の毛と赤い眼をもつ大神狐様がいた。
大神狐様には身の回りの御世話をする巫女が常に付従っていた。
名を大神狐様がユエ、巫女を甄(しん)といった。
ユエは甄を愛していた。甄もまたユエを愛していた。
しかし、お互いの立場がそれを許してはくれなかった。
神が一人だけの人を愛するなんて、巫女が神を愛するなんて…
そんな想いが二人を縛り付けていた。
お互い気持ちを伝えることもできずに月日は過ぎ、事件は起こってしまう。
妖と人の争いが起きてしまったのだ。
妖達が人里に攻め込んできた。人々は次々と倒れ、妖達はついにユエの治める稲荷神社にまで攻め込んできた。
その時ユエは妖達が攻め込んできた原因を調べるために社を離れていた。
万が一妖が攻め込んできても大丈夫なように結界を張って。
しかし、結界はいとも簡単に破壊されてしまった。
仮にも天狐が張った結界。
そんな簡単に破られるものではないはずだった。
破られた理由は一つ。
ユエの想像以上に力を持った者が妖達を率いていたからだ。
その者がユエの結界を破り、神社の敷地内に妖達を招き入れた。
ユエがそのことに気付いた頃には時すでに遅く、妖が社まで攻め込んできた後だった。
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