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時は、平成。世の中はずいぶんと様変わりした。
京の夜も例外ではない。
昔は、武士や人斬りが闊歩し、常に血の匂いが付きまとっていた京の夜もずいぶん華やかになった。
こんな夜を幾千と一人で過ごしてきた。
だが、今宵は違った。
この京の夜に愛おしい人の気配を確かに感じた。
ずっと探し求めた人が遂に見つかろうとしている。
わずかな気配を辿って、俺は甄を追っていった。
近づくにつれて、そばにもう一つ気配があることに気が付いた。
いやな予感がする。
感じるもう一つの気配は妖のものだ。
甄は生前強い霊力を持っていた。転生しても霊力が強いままであれば妖にとってはこれほどの餌はない。
霊力の強い人間は食すと力が増す。
必然的に妖に狙われやすくなる。
ましてやここは京都。もっとも妖が蔓延る都だ。
急がないと手遅れになってしまう。
再び妖に大事な人を奪われてなるものか!
今度こそ伝えなければならないんだ!!
俺は、必死に甄の気配をおってとある神社に辿り着いた。
着いた途端、目の前で何かが崩れ落ちた。
あわてて駆け寄ると女ではあったが甄ではなかった。
甄どころか女は妖だった。
倒れた妖の女と駆け寄った俺に少し離れた所から冷たい視線を向ける男がいる。
あの男が妖の女を殺ったのだろうか?
だとすればあの男は陰陽師だろう。それ以外に妖を倒せる人間は考えられない。
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