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アルマは町中を練り歩きながらターゲットを品定めしていた。
その際に、ちゃっかりと果物屋から盗んだ林檎を頬張ってもいる。
「さてと」
林檎を飲み込み、リンリンと鈴を鳴らしながら街を歩くアルマ。そんな彼が抱いた感想は
「人が少ないなー」
そう、とにかく人が少ないのだ。さっきの果物屋も「ご自由にお取りください」状態だったのだし、だからこそ簡単に林檎が調達できた。
「やっぱり、[太陽と月の魔女]とかのせいかな~」
この街で情報収集をしている時に聞いた話では、この街は[太陽と月の魔女]という手品師がやりたい放題をやっているという。そのため、外を出歩く人が極端に少ない。
「う~ん。こりゃ、地道に品定めするしかないな」
魔女のことなど気にもかけず、アルマは街を練り歩き始めた。
***
「な、なんじゃこりゃああ!」
大豪邸の主は自分宛てに届いたという手紙をくしゃくしゃにして放り投げた。
手紙の内容はこうだ。
この街の大金持ち様へ
今宵、貴方様の所有するお宝『村雨』を頂きに参上します。首はどうでもいいから『村雨』の刀身を磨いて待っとけ! ではまた、月が貴方の頭と同じぐらい輝く夜に。 怪盗アルマゲスト
邸主の驚愕は当然だろう。
国内で怪盗アルマゲストを知らない者はいない。
彼は、無駄に財産を持つ者から盗み、貧しい者へ財産を与えるのだ。
そして、怪盗アルマゲストは、鈴の音と共に姿を現す、と言われている。
皆の憧れのような存在。
それ故に、貧しい人々の間では、彼を捕まえるなという運動が起こっている。
それとは反対に、金持ちは早く奴を捕まえろ!と怒りを顕にしている。
そして王室にとってアルマゲストとは目の上のたんこぶのような存在として疎まれているのだった。
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