第1夜:アルマと双子魔女

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館は凄い騒動であった。 警備員達があたふたとした様子で長官の指示を仰ぐ。 「長官、そろそろ予告時間でございます!」 「ふむ、そうか。皆の衆、気を張りなおせ!」 「「「はっ!」」」  長官の一括に力強く警備員達が答えた、その時だった。勢いよく扉を開け邸主が息も切れ切れに叫んだ。 「大変じゃ!館の裏側で、警備員が一人倒れておった! 怪盗めはもうどこかに潜んでおるやもしれぬ!」 「……それは、大変ですね」  長官が厳かな声で頷く。 そんな男を亭主は大声でどなりちらした。 「のんびりしとる場合か!早く探すのじゃ!」 「と、言われましてもねぇ……」  長官の表情が厳かな表情からニンマリとした笑みに変わった。そして言う。 「貴方を逃がすわけにはいかんのですよ、怪盗殿」 「な、何を言っておるのじゃ?」  邸主は訳が分からないと言うように肩をすくめる。そんな主人に長官は右手を掲げながら答える。 「今日、決めたじゃありませんか。貴方は自室にこもっていると」 「いや、それはその……そう、トイレじゃ、トイレに行っておったのじゃ!」  それが決定打になったのか、長官ははっきりとした嘲笑を浮かべて止めを刺した。 「そうですか。トイレですか。おかしいですね。トイレは自室にもあるじゃないですか」 「いや、壊れたからの」 「と言うのは嘘だ。自室にトイレを作るもの好きがどこにいる。皆の衆、こやつをひっ捕らえろ!」 「「「はっ!」」」 すかさず警備員達が飛びかかろうとする。 ――その時だった。 「長官、大変です!」 空気を読まない外警備が飛び込んできた。警備員はそのまま息継ぐ暇もなく続ける。 「ま、魔女、魔女です! [太陽と月の魔女]が、上空に!」  と、その直後、どこからか妙に間の抜けた声が響き渡った。 「あっはっは!」 「呼ばれて飛び出て!」 瞬間、爆砕音と共に天井が砕け、その穴から二人の少女が飛び込んで――いや、ふよふよと浮かぶ球状の物体に乗って現れた。 「太陽の魔女ソール!」 「月の魔女マーニ!」 「「ただいま参上!」」 ビシッとポーズを決め、巨大な浮遊物体の上に立つ[太陽と月の魔女]ソールとマーニとかいう少女たち。
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