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時間の許す限り、オユサはわざわざ足を運んで新米隊員に訓練を施す。その訓練は、穏やかな見た目とは異なり、部隊長以上に厳しいと有名なものだった。
自身が若い頃は、忌まわしきライズ統率隊において弱小救護班というレッテルを貼られていた。戦闘班のような荒々しい人間と形式だけを気にするお役所仕事の上層部に、オユサは辟易していた。傷ついても戦えるのは何故なのか、戦う理由は国民の為ではないのか、救護班は置物なのか。戦えないという理由で叩かれた時代にいた彼女は、救護班の存在を必要不可欠なものとして確立させる確固たる理念を持っていた。手当ての技術、身のこなしの向上を全隊員に課した。
本当であれば、戦う力も付けさせたいところだが、それでは本業である救命措置の訓練が疎かになり、加えて体力のある新米隊員は、戦闘班や警察班に引き抜かれ、志願して入る者も引き抜かれる者も、救護班はスタミナの少ない人間ばかりだった。
その中で、オユサは希望を見出した。それが、サイスだ。強い意志で救護班に希望し、筋骨隆々とした健康的な隊員をオユサは歓迎した。しかも、女性である。オユサは、隊員達にできるのなら気知の手並も教授したいと考えている。素質は人それぞれであるが、気知の力はレンのような天性の素質を持っている者を除いて、女性が比較的素質が高い。可能性は十分に認められていた。
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