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センリの後へ続いて、まだ見ていたかった空を名残惜しく思い、浜辺を後にした。道中、センリはオレの予言を予想していた。明日は仕事でミスをする、これから腹を壊す、そんな些細な予言だ。しかも、オレにとってマイナスな予言ばかりを予想し、それでいて楽しそうにするからまた悪質だ。天使の皮を被った悪魔とは、センリの為の言葉だ。
やがて、町外れに聳える谷が見えた。森林に囲まれ、透明な川がサラサラと流れている。谷の名は、かつて、この谷で修行をしていた仙人が千の歳まで生きた事に由来している。ジジィはなんでもその仙人の血縁らしいが、どうだろうか。谷に不器用に作られた石階段を上り、ジジィの住み処となっている大きな切り株を加工したような家の前に立った。
「爺さん、シドを連れてきたよ」
センリが元気よく扉を開けると、ジジィはすぐ目の前に座っていた。相変わらず、生活感を感じない、物の少ない部屋だ。
「おぉ。スマンなぁ、センリ」
声が痙攣している。見た目と同じように嗄れたと表現できる。毛も全部真っ白で長い。いつ見ても今にも死にそうだ。
「ジジィ。オレを呼んだってことは、オレの未来が見えてたってことだよな?しかも、オレが予言とかを信じないのを知ってる上でわざわざ面会をしてまで呼ぶって事は、よっぽど重要な事なんだろ?オレの寿命でもわかったってか?」
思った事を次々に言う。いつものことだ。こんな風に先を予測して言ってるオレも、ある意味預言者かもしれない。けど、オレのは確証もないただの推測に過ぎない。予言とは程遠い。
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