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やっと口が開いたと思ったら、と溜息しか出ない。予言を信じないにしても、自分の寿命に関する事であるから、さすがに少しながらも緊張したのだが、それは無駄だったようだ。言葉の理解に苦しむとはこの事だ。世界から消えるという言い回しは何なのか。それこそ、死ぬということではないのだろうか。だとしても、言い回しがあまりに滑稽でファンタジックだ。ジジィの趣味とは正反対なものだ。折角だ、詳しく聞こうじゃないか。
「理解できねぇんだけど」
「スマンのう。儂でも詳しい事はわからんのだ。だが、儂が見えた未来。お前は3日後にこの世界から消えておった」
「世界から消えるって表現が曖昧すぎるんだよ。ちなみに、世界から消える原因とやらは何なんだ」
ジジィは、また口を噤む。何を迷っているのかはわからない。ジジィは、辛い未来でもきちんと伝えなくてはいけないという、よくわからない義務感を持っている。預言者としてのプライドと見える。オレにとっては、妄想極まりない。やがて、ゆっくりと口を開いた。
「何か得体の知れぬ黒いものに呑まれる。わかっているのはそれだけじゃ」
結局、わからないのか。これでも一応予言者の筈だ。信じるつもりはないが、どうせ予言をするなら中途半端に予言をしないでほしい。困った老人だ。
「じゃあ、オレは3日後に死ぬって事か?」
そう質問すると、センリが目を見開いてこちらを見た。死ぬという表現が、随分とインパクトを与えたようだ。
「それが、一概にそうとは言えぬ」
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