壊れゆく日常

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マンションにある無数のドアの1つを開くと、見慣れた玄関があった。 特に何かを飾っているわけでもない質素な空間が目の前には広がっている。 「ただいまぁ」 すると、リビングに繋がる正面のドアから妹の優奈(ユウナ)が制服姿で出てきた。 「おかえり、お兄ちゃん♪ 今日は遅かったね。あ、珍しくお兄ちゃん宛てに手紙来てたよっ!」 俺は靴を脱ぎながら、優奈から一通の手紙を受け取った。その手紙には確かに《神城 翔》(カミシロ ショウ)という名前があった。 「後で見てみるよ。それより優奈、晩御飯は何作る?」 「はぁ、面倒くさいなぁ。たまには誰かに作ってほしいよぉ」 頭ががくっとうなだれる。 そんな優奈の頭に手を乗せ、髪の毛をくしゃくしゃっとする。 「じゃあ今日は俺が作るか!」 「本当に!? お兄ちゃんありがとう!!」 実のところ、親は3年前突然俺たちの前から居なくなり、身寄りも少なく、今は2人で過ごしている。最初の頃は何も出来ない上、悲しさで毎日のように泣いていた。今でも寂しくなるときはあるが、十分に2人で楽しく暮らせている。
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