廃墟 未完成

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 考えることを止めて、しばらく立っていた。ハッと気付き、いい加減ここを出て行こうとする。考え続けてボーッとしてしまうのは、僕の昔からの悪い癖だ。  しかも、その間は音も耳がシャットアウトしているらしく、友人にこっぴどく叱られたこともある。床が床で体育の授業のときのように手際よく回れ右は出来ないため、いそいそと後ろに体を向けた。  締まっている障子に手を掛け、開けた。相変わらず開きづらい……。相変わらずと言っても、2回だけか。興冷めしていた心が溶け、少しばかり笑った。  そこで違和感を感じた。 「あ、あれ?」  僕は、あの和室に入った時に一々障子を閉めなかったはず。今、その障子を開けようとしている。一体、誰が閉めたんだ……?  記憶違い……だよな。何気ない動作だったから覚えてないだけかもしれない。学校ではよく言われてるじゃないか。忘れっぽい奴だって。  今回もそうだ。疑念を振り払って僕は障子を開いた。  ――視界に広がる和室。その和室は僕がたったいま出てきた和室と不気味なほど似ていて……。その不気味さを感じとったためか、それ以前の問題を忘れてしまっていた。 「ろ、廊下は!?」  呂律が上手く回らない。こんな体験は、勿論したことがない。白昼夢……? そんな考えがよぎって、ベタとは思いつつも頬っぺたをつねってみた。痛い……。当然だ。  しかし、痛みを感じてしまったということは、これが現実であるという事実にほかならないじゃないか……。一体どうすればいいんだ。こんな気味悪い家に一人で取り残されるなんて……。
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