廃墟 未完成

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 落ち着こう。焦っては時間の浪費にもなるし、無駄に心をすり減らすことになる。……こう考えることが出来てるってことはちょっとは冷静ってことなのかな。自分が考えた「もしも」が「現実」になるのは恐ろしいことかもしれない。  しかし、そんな非現実的な事が起こり、ここに入るまでに躍らせていた好奇心が蘇ってきた。廊下に続く扉が繋がっている。僕の入ってきた唯一の出入り口がもう一つの部屋と繋がってしまった。例えるなら鏡の世界と繋がった……のかな。部屋と部屋との中間に立って、左右を見渡すとまるで僕が考えたことが現実になるように左右対称だった。  今までいた部屋から新しく現れた部屋へと足を動かす。相変わらず不気味だ。畳はじめっと湿っていて足の衝撃を嫌な感じで吸収している。この感覚は耐えられない。畳の上に置いてある小さな机に歩み寄る。  その机の上に紙が置かれていた。薄汚れた紙。白い紙に土色の汚れが目立つ。泥が跳ねたように汚れていた。その紙の横に鉛筆が転がっていた。誰かが書いたモノ? よく紙を見ると裏に何か文字が書かれているようだった。  紙をひっくり返して文字を読む。薄汚れた紙とは裏腹にコンピューターで印刷されたような綺麗な字が鉛筆で書かれていた。
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