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「次の時間はテストだというのに、
余裕があってうらやましいわ」
テキストから目を離して、フォルテと言い合っている少女たちの一団を見た。
「私はあなた方と違って優秀じゃないから勉強していたいの。
もう少し静かにしてもらえないかしら?」
トゲのある物言いに、かちんときた少女だが
彼女たちを見つめる他のクラスメイトの空気は
トリルに同調しているようだった。
その何人かは
『よく言ってくれた!』と思っている様子だった。
何か言いたげに口を閉じたり開いたりしたものの
クラス全体を包んでいる空気に押されて何も言えず
ぷいっと教室を出て行ってしまった。
取り巻きたちは
慌てたように続いて教室から出ていく。
「助かったぁ。ありがと」
フォルテはトリルに礼を述べた。
「別にあなたを助けたわけじゃないわ。
本当にうるさかったんですもの」
涼しい顔をして、トリルはテキストに目を落とした。
「そうやって、クールに意見が言えるのってすごいよ。
ね?そう思わない?」
「ええ、そうね」
この一連のやりとりを
トルテの隣に座って、ノートから伺い見ていたフィーネがこたえた。
「そんなことより、続きをやらなくてもいいの?」
トリルはテキストを机の上に置いて、フォルテを見た。
「このテスト、落とせないんでしょ?
あまり時間がないし聞きたいことあるなら、今のうち聞いてちょうだい」
「あ~!そうだった!
ごめん、ごめん」
フォルテは慌ててノートを開いて、テスト直前の山かけを再開した。
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