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街の外れに小さな森がある。
その森には、池と呼ぶには大きいが
湖と呼ぶには小さすぎる、澄んだ水で満たされた場所がある。
そこは、古くから
「女神の泉」と呼ばれていた。
その名の通り、女神が出現するという言い伝えがある。
実際にその姿を見た、という目撃情報も多くある。
その女神が何者であり、何故そこに出現するのかはわかっていないが、とにかく現れるのだ。
年齢は10代前半の少女で、白いマントのようなものに身を包んでいる。
白い衣類に黒髪がとても印象的で、悲しげな瞳を向けて見つめてくる。
というのが目撃者の共通点。
そして、どこからかやってくる風に乗って
澄んだ美しい鈴の音が聞こえてくるのだという。
泉の水の透明度は高く、美しい。
太陽の光で水面は宝石のように輝き、水中で泳ぐ小さな魚たちの姿も見られる。
この泉の水を飲むと
病気が快方に向かうとか、願いが叶うとか
そういった類の言い伝えがご多聞にもれず存在し
水を汲みに訪れる人が今も絶えない。
しかし
『女神』の姿を見た後は、必ず何らかの事故やトラブルに巻き込まれるため
「災難を警告している」
「災厄を招いている」
のどちらだろうか、と
長く結論がでないまま議論されている。
どちらにしても歓迎しない出来事が起こることは確かなので
積極的に姿を見ようという物好きはいない。
それでも、彼女の美しく儚げな姿は見たものの心に残り
女神の伝説は言葉だけではなく、絵画としても描かれていた。
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