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「だってぇ、カルマート君が他の誰かにとられちゃうのは
絶対嫌だもん」
泉に行く、と言い出した少女は頬を膨らませた。
「彼が私を好きになってくれるように願いをかけてぇ~、それでぇ
それからぁ
告白するんだも~ん!」
「そうなんだ」
熱心に語る少女に押される形で
取り巻きたちは戸惑いを隠しながらうなずいた。
「明後日は満月でしょ?
チャンスじゃない。だから行こうと思うの。
でもぉ、1人じゃ怖いから、誰かと行きたいと思ってるんだけど~」
その言葉に
取り巻きたちは顔を見合わせた。
「私の家は門限があるから、ごめんね」
「私もなんだ」
「夜、歩くのは怖いから」
「私はバイトがあるし……」
尻ごみをする
取り巻きの少女たちに
「あなたちが一緒に来てくれるなんて期待していないわよぉ。
やっぱりぃ、こういうことはぁ~
良くわかっている人に来てもらいたいもの~。
ね、フォルテちゃん!」
突然、名前を呼ばれ
フォルテは驚いて振り向いた。
「へ?なに?」
授業の合間の短い昼休み。
教室で他愛もない雑談を交わしたり、思い思いに過ごしている時間だった。
窓からは、春の柔らかな光が注いでいる。
「フォルテちゃんのお家
女神の泉に近いんでしょ?
お~ね~が~い~。
ほんの1時間くらいだから、つきあってくれなぁい?」
『お~ね~が~い~』と、口にしてはいるが
有無をいわさず付き合わせる
という前提を含んだニュアンスが感じられた。
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