思い出せば遥か遥か

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  「……雪乃、眠い?」 「……ん、ちょっとだけ……」 ぼんやりした頭に心地良く響く声が訊いた。 その澄んだ声は低血圧の私を夢からゆっくり引き上げていく。 二人乗りしたちょっと古い型のバイクの振動が、内臓や骨とか心とか全てを揺らしている――この時間が好き。 右頬をくっつけた彼の背中。そこから感じる体温は静かで柔らかでいつまでも縋り付きたくなる心地良さ……あぁ、だめだなぁ。 「朝飯、入る?」 「……ん」 ――正直あんまり食べたくない。 そもそも食欲というもの自体が私にはあまりないから……でも、今はいつも以上に空腹というものを感じない。 ……昨晩ずっと大学で描いてる絵の仕上げをしていたからかな……。 「着いたよ」 「ありがとう」 ヘルメットを彼の手に渡してバイクから降りる。見上げた彼の顔は優しい笑みが浮かんでいた。 ――彼は、私のすきなひと。  
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